ここでは大正15年度(1926年度)頃から行われた内容を中心に取り上げる。当時の農林省が狂犬病対策を担っており、農林省が予算を確保した上で狂犬病予防週間の骨組みを作った。記録によると現在の都道府県単位で実施内容が異なることから、それぞれの地方自治体が主体的工夫して実施したようである。
啓発活動
飼い犬の登録や係留など犬の正しい飼い方に加え、狂犬病に関する一般知識などを広く民衆へ伝えることが目的とした
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飼い犬の管理
未登録犬を減らし、多くの犬にワクチン接種を行い、ワクチン接種率の向上をを行う事を目的とした
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放蕩犬の制限
自由に行動する放浪する犬を減少させることで、咬傷事故や狂犬病感染の持続を減少させることを目的とした
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▶ 啓発活動
① 日刊新聞への掲載
狂犬病に関する一般知識、予防週間実施の趣旨、事業及び人畜被害統計などを日刊新聞に掲載した。
② 印刷物(ポスター、ビラ、パンフレット)の配布
公の掲示板、理髪店、湯屋、停車場、停留所などに掲示。印刷物は巡査、小学校児童、青年会、自警団、在郷軍人、市町村吏員などを通じて配布した。
③ 教育機関での講話
幼稚園、小学校、中学校の児童生徒に対して府県吏員を通して講話材料を提供して、園長や校長、担任教師などから講話した。
▶ 飼い犬の管理
① 戸口調査 / 訪問登録
巡査、小学校児童、市町村吏、青年会、在郷軍人、村の総代などへ協力を依頼した。なお、小学校児童に協力してもらう方法が最も効果的であったと記載がある。無登録犬を個別調査で拘留した。登録を行っていない飼い主は、区役所や保健所で登録を行うとともに、係留飼育を徹底することを呼びかけを行っていた。結果として、飼い犬の頭数の11%は期間中に新規届け出があったとされる。
《登録促進に向けた各種取り組み》
・狂犬病予防週間中、渋谷駅前などで登録の受付を実施(1951)
・都は無登録犬を戸別調査で抑留(1952)
② 予防接種
1927年、狂犬病予防週間中に実施された各都道府県のワクチン接種体制は以下の通りであった。
・週間中ならびに常時随時から実施(16)
・一斉実施(2)
・常時随時実施(11)
・予防接種を実施しない(16)
予防週間に予防注射を実施した府県においては、一般市民への関心を高めることができた場合は平素から実施する場合より注射漏れが少なかったという。
▶ 放蕩犬の制限
① 野犬の掃蕩
狂犬病予防週間に合わせて、野犬の掃蕩を行うことを強化した。
② 飼い犬の係留の強制
予め庁府県令の発布を行い、飼い犬(1949年8月10日-9月10日は飼い犬および飼い猫)を必ず係留するように強制した。期間中は他の府県への移動も禁止されるだけでなく、運動させる場合も手綱をつけ口輪をはめることを命じた。違反者は1万円以下の罰金に処されるとされた。
③ 犬の買い上げ
犬の買い上げ場所を周知(ビラ・パンフレットなどに明示)したうえで、犬を持参した人に現金を直接渡すか、整理票を交付して後日現金を交付する方式で行った。
以下は1926年前後の流行時に基準として農林省が示したものである。
最高 | 最低 | 標準 | |
成犬 | 100銭 | 25銭 | 50銭 |
子犬 | 25銭 | 10銭 | 25銭 |